わんちゃんとも生活のお悩みのベスト3に入ると思われる口臭、歯石問題。
最近特にSNSなどで話題なのが無麻酔歯石除去だと思います。
動物病院でのトリミングの経験や歯石や歯周病の子をたくさん見てきたからこそ、わんちゃんを飼っている飼い主としても私は無麻酔歯石除去はおすすめしませんし、やりません。
おすすめできない理由をお話しする前にメリットを少しお話しします。
◇メリット
・見た目がきれいになる
・口臭が軽減される
・高齢でも歯石をとることだけはできる。
続いて私が知っている範囲でのデメリットになります。
◇デメリット
・意識がある中で器具で歯をガリガリされるので、歯茎への痛み、衝撃からトラウマになり口に触れなくなる
→定期的な自宅でのハミガキができなくなる。
→口周りを触られるのを嫌がり顔カットができなくなる。毛は伸び放題になり、目ヤニや食べかすなどで汚れるため切らなくてはいけなくなるので、無理に押さえつけてカットしなければいけなくなります。
・歯周病などの治療はできない。
→あくまで無麻酔歯石除去は美容目的などになりますので、歯周病や口腔内の治療はできません。治療や診断をしていいのは獣医さんだけと法律で決まっています。治療として行った場合、法律違反になります。
無麻酔歯石除去はきれいになりますが、歯周病の予防や治療はできないため、ただ歯石をとるだけで歯周病が知らないうちに進行してしまうこともあります。
・歯周病が進んで顎の骨がもろくなっている場合、顎の骨が折れてしまうことがある。
→顎の骨がもろくなっているかはレントゲン検査でしかわかりません。
無麻酔歯石除去後、口が閉じられなくなってしまい診察を受けたところ顎の骨が折れていたという症例もあります。
・仰向けの姿勢
→高齢のわんちゃんは心臓病を患っている可能性が非常に高いです。
心臓病を患っている場合、興奮したり、湿度が高いなどの影響で肺水腫を起こしてしまい命の危険を及ぼすことがあります。肺水腫は肺に水が溜まった状態です。地上にいながらおぼれているような状態なのです。
肺水腫の場合、仰向けの状態だと肺にたまった水が肺を圧迫するのでかなり苦しく、命を落とす可能性はかなり高いです。
この状態をただわんちゃんを見ただけで判断はできませんし、獣医さん以外が判断することはできません。
獣医さんや国家資格の看護師さんではない方が無麻酔歯石除去をしていることがほとんどなので、わんちゃんの小さな変化に気付かず命を落としたという事例もあります。
定期的にエコー検査や診察を受けていれば心臓病の有無を把握できると思いますが、元気だからと検査や診察を受けていない場合は絶対ない!と言い切れませんよね?
→仰向けにする際、わんちゃんの体のつくりをしっかり理解して仰向けにしていればいいですが、わからず仰向けにしてしまうと、肩、背中、腰を痛めることもあります。
・歯石を取り除いたあと、歯の表面についた傷をきれいに磨くことができない。
→細かい傷がそのままになるため、そこにまた汚れがつきやすく、歯石が付きやすい。
そもそも注目すべき症状は歯周病です!
歯石は歯周病の直接的な原因ではありません。
歯周病は口腔内細菌が歯周ポケットに入り込み悪さをし、歯の根っこや顎の骨が溶けてしまう病気です😨
顎の骨が溶けて折れてしまったり、口腔内細菌が血液に乗って心臓や他の臓器に影響を及ぼすこともあります。
上記以外にもいろいろとデメリットはあるため、お掃除目的だけの理由ならいいですが、わんちゃんの口腔内の健康やわんちゃんの今後のことを考えるなら、無麻酔歯石除去は私はおすすめしません。
どんな行為にもメリットデメリットはありますが、選ぶならデメリットが少ない方を選んでいけた方がわんちゃんと飼い主様の生活をより良くできると思います。